『ニオイ空間と情報伝達』講演会 “Odor space and information transmission” lecture

当社LINX GROUPの学術顧問として研究開発を指導している雫二公雄先生が、3月5日に行われた日立ITユーザー会分科会にて、『ニオイ空間と情報伝達』というタイトルで講演を行いました。

講演会では、ニオイ空間と情報伝達をキーワードに、ニオイの発生メカニズムから伝達、ニオイ分類と識別技術、一般的な消臭方法と当社製品のDefender NTSやAIR MEDICでも使用しているアミノペプチド技術による最先端消臭方法、ニオイ制御技術のAI化などについて語られました。下記、講演会内容の一部抜粋。

 人体は独自のニオイによって識別されており、人間の「ニオイ型」という遺伝子情報で決められたニオイがMHC 遺伝子群によって影響を受けている。

 人間の遺伝子群は、体臭を個体特有の「ニオイ型」にする上でも重要な役割を担っていること、「ニオイ型」は個体固有の抗原系が合成される際の副産物や代謝分解される際に生じる生成物の複合臭として形成されており、その成分配列型が特定できるようになった。

 悪臭とは発生源の解明が最も重要であるが、その強度と揮発性の特性から拡散速度が左右され、各国では、悪臭防御に対しての法令により、悪臭を規制することになっている。人体に影響を及ぼす臭いの種類と許容濃度を規制基準としている。

 悪臭の発生源を特定するための測定には、① 成分濃度表示法(機器測定法)、② 嗅覚測定法(臭気強度表示、快・不快表示、臭気濃度表示法)、③ 臭気濃度測定法(注射器法、三点比較式臭袋法、オルファクトメーター法、無臭室法)などが使われる。

 臭いの種類は、臭いの強さを臭気指数相当値で計測し、ニオイの傾向を判明した上で、官能検査、検知管検査、精密分析などによりニオイ成分を特定することができる。

 悪臭は、元から絶つ事が基本であり、その次の段階として下記の各種方法が講じられている。

 1)ニオイを希釈して薄める(空気希釈法、換気法)

 2)ニオイ物質を吸着して除く(吸着脱臭法)

 3)臭気を燃やしてニオイ物質を分解する(燃焼脱臭法)

 4)液体にニオイ物質を吸収させる(湿式洗浄法)

 5)温度を下げ、ニオイを凝縮して除去する(凝縮法)

 6)微生物を利用して、ニオイ成分を分解する(生物脱臭法)

 7)消・脱臭剤を用いる(消・脱臭法)

 LINX GROUPが開発したDefender NTSは、荷電されたアミノペプチドや植物抽出成分、ナノイオン水により(+)と(-)イオンが含まれる安定したハイブリット型消臭メカニズムかをもっている。

 アミノペプチドからなるアミノ基(-NH2)や2級アミノ基(>NH)、植物抽出成分からなるヒドロキシル基(-OH)、ナノイオン水による荷電イオンなどが含まれ、幅広い臭気物質を吸着し分解消臭している。

 荷電されたアミノペプチドや植物抽出成分、ナノイオン水は優れた抗菌性もあり、抗菌分野でも多くの役割を果たしている。特に、健康食品、化粧品、介護医療などではその用途が広い。

 当社が研究開発している一部の植物抽出液と穀物抽出液は、古代から抗菌作用・防虫効果を主たる目的として使われており、現代においては人体に対する安全性と環境親和性が高いことで注目されている。

 植物が自己防衛でつくりだす成分には多様な効果があることが明らかになってきている。一部の植物精油成分は抗腫瘍効果があり、これに着目した研究が日本の大学でも進んでいる。

 「ニオイ」は、他の五感情報(触覚、視覚、聴覚、味覚)に比べ、研究開発が進められていなかったが、近年「ニオイ」に関する特性研究成果が出始めており、「ニオイ」制御技術のAI化など今後の更なるビジネス発展を期待したい。

                                     2019年3月5日 雫二公雄